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ひとみ系創作」
囁きの行方~Sweet memories~

囁きの行方 ~ Sweet Memories ~ [第2話]

2006.12.01  *Edit 

※第2話※

やらなければならないことは山ほどあった。
オレはまず、事故の経緯、事故の相手、マリナが何故事故現場にいたのかを調べた。
事故直後にも報告は順を追って届いており、なんら新しい事実はつかめなかった。
マリナはあの事故の日、『友人に会いに行く』と言って出かけたと言う。その友人とは誰だ。その人物が誰なのか、オレはまだつかんでいなかった。マリナがパリで暮らすようになって2年。交友関係は把握していたつもりだ。だが、その誰ともマリナは会う約束はしていなかった。何故だ。マリナが記憶を失うほどのショックを受けた出来事とはいったい何だ。
もちろん事故自体のショックと言うことも考えられなくは無い。だが、あのマリナが事故でこれほどのショックを受けるだろうか。マリナはあれでも何度も命の危機に遭遇してきているのだ。
それとも。
事故後に行ったマリナの検査結果に不備があったのだろうか。いや、それはない。オレ自身がついて、細心の注意を払ってマリナの検査を行ったのだ。ミスはありえない。
実際、脳と言うものは非常にデリケートなものだ。どんな微細な損傷であろうとも多大な障害を引き起こすことがある。絶対はないと言うことは嫌と言うほどわかっていた。
いったい原因はなんだ。ありとあらゆる方面からマリナの記憶障害の原因を突き止めなくては・・・。
もし、心因性の健忘であれば、1ヶ月~半年くらいで自然に治ってくる可能性もある。古い記憶から徐々に思い出してゆき、後遺症もほとんど無いケースがほとんどだ。
だが、外傷性の場合、脳の損傷の完治は難しく、たとえ治癒したとしても、マリナは後遺症になやまされることになるだろう。
健忘の原因がどちらであれ、マリナにとっては痛みを伴う治療になりそうだった。

心が、張り裂けてしまいそうだ。
オレを愛していない君の眼差しが、オレに深い絶望を与える。
オレではない男を求める君の瞳に、忘れていたはずの胸の痛みがよみがえる。
昔と同じはずのその痛みは、以前よりも激しさを増し、オレのわずかばかりの人間らしい心を締め上げる。
オレを友情のこもった瞳で見つめる君は、その微笑みだけで、オレの愛の告白も、囁いた愛の言葉も、まるで無かったことにしてしまうのかい?
オレのマリナ。今、君に会いたい。



翌朝、マリナの部屋を訪れると、マリナは昨日よりも元気そうに見えた。
オレの姿を見て、嬉しそうに笑うマリナの瞳に、オレへの恋情は感じられなかった。

「おはよう、シャルル!ね、・・和矢は?」

とたんに恋する瞳になったマリナが恨めしい。マリナの中の和矢はあの17歳の和矢だ。今の、現実の和矢ではない。
頭ではそう理解していても、割り切れない感情が行き場をなくしていた。

「カズヤなら、元気だよ。今頃は日本にいるさ。」

答え方がつい冷たくなる。事実だけを簡潔に告げた自分の言葉に心が震えるのを感じていた。

「そう・・・。帰っちゃったの。で、でもっ、元気になってよかったわよねっ!」

無理をして笑う、切なげで頼りないマリナの声に、オレは思わずマリナを抱きしめそうになった。マリナを抱きしめる代わりに自分のこぶしを強く握り締める。今のマリナを、混乱させたくはなかった。

「そうだ。カズヤは大丈夫だ。君は君の体を直すことだけを考えろ。」

『君の恋人はオレだ』と叫びたいのを堪えて告げた言葉は、驚くほど冷たく響いた。そのオレの言葉に気分を害したのか、マリナは頬を膨らませると、オレから顔を背けて、窓の外へと視線を向けた。

マリナを強引に抱きしめて愛を囁き、口付けをすることはたやすい。
それはオレの意思と行動であり、マリナの意思は存在しないからだ。


君を、愛している。
心のどこかで覚えているかい?君も、オレを愛してくれていた。
なのに。今の君は、愛の眼差しでオレを見ない。君からオレに口付けをくれない。
君のしてくれた、たどたどしいキスが恋しい。
キスをして、抱きしめて、またキスをして。
君が飽きるほど口付けて、君の小さな体を抱きしめて眠りたい。


事態は思わしくない方へと流れていた。恐れていたことが起こっていた。
一日経過を見た時点で、マリナにはやはり、前向健忘の症状も見られた。
記憶の持続時間が短いのだ。
朝、オレが訪ねた事を、夜には覚えていない。健忘の症状としてはよくあるケースであり、オレ自身も何度も医者としてそういう患者に関わってきた。その治療に、あせりは禁物だと言うこともいやと言うほどわかっている。
だが、会うたびにカズヤの事を聞かれることに、オレは思いのほか動揺していた。
マリナの言葉に、態度に、オレは傷ついていた。
それらは鋭い刃物のようにオレを切り裂き、心臓から血をあふれさせた。
何度叫びだしたい思いをこらえたことだろう。しかし、今マリナにカズヤとの別れを教え、オレとの関係を伝えたとしても、おそらくその記憶が持続することは無いだろう。
1日、いや数時間後には失われてしまう記憶。
またマリナはカズヤのことをオレに尋ねるだろう。
終わりの見えない、無限のループ。
オレはいつまで、それに耐えることが出来るだろうか。
どれだけの愛の告白をし、どれだけの愛の言葉を囁きかけても、まるで淡雪が消え去るようにマリナの心からその言葉たちは消えてしまう。
何もかも、オレの想いも、マリナの想いも、まるで無かったことにして。
オレたちの、あの幸せだった日々はどこへいってしまったのだろう。




また、朝が来る。
マリナが意識を取り戻してからと言うもの、オレはあまり眠れない夜をすごしていた。
孤独な夜が明けると、さらに孤独な朝がやってくる。
オレは鉛のように重い体を引きずって、マリナの部屋へと向かう。マリナの診察をするために。マリナはきっとまたカズヤの所在を尋ねるだろう。あの、恋する瞳で。
もしマリナが目覚めた時に傍らにカズヤの姿があれば、マリナは心安らかにすごすことができるのだろうか。あの、はじけるような笑顔で、笑ってくれるのだろうか。
苦しかった。
マリナの愛に飢えきっている自分がいた。

やっとの思いでマリナの部屋へとたどり着き、軽いノックをすると同時に、オレは自分の心に錠をかける。

「どうぞ~っ。」

以前と同じマリナの声が胸に痛い。オレはカチャリと音を立ててドアを開き、マリナの部屋へと足を踏み入れた。

「おはよう、マリナ。気分はどうだい?」

自分の感情を押し込めることには慣れているはずだった。マリナに出会うずっと以前から、いつも何の苦も無くやってきたことだ。
なのに。

「あ、シャルル、おはよ。和矢は一緒じゃないの?」

マリナの言葉に胸が、心が痛む。
『もしかしたら』と言う希望が、砂の城のようにもろく崩れ去ってゆく。希望が、少しずつオレを蝕んでいた。
そしてオレはここ数日お決まりになってしまった答えを返す。

「カズヤは出掛けている。もうすぐ帰ってくるよ。」

あの頃も思っていた。希望とは何て残酷なものだろう、と。希望に、押しつぶされそうだ。
希望さえ抱かなければ、人は絶望の谷に落とされることは無いのに。

一通りの診察を終え、マリナの部屋を後にする。
あの頃のオレと、今のオレはどちらがましだろう。オレもあの頃に戻ってしまえば、こんなに苦しまずに済むのだろうか。
何の音も、光さえも感じない。世界は色を失ってしまった。オレは改めて気付いた。こんなにもマリナはオレのすべてだったのだ、と。

記憶障害。それは決して治らないという類のものではない。しかし100パーセント完治すると言う物でもない。心因性であれば、心療内科の分野だが、外傷性であったとしたら・・・・。
マリナの、オレへの愛は、戻ってくるのだろうか。


重い足取りで、自室へと戻り、そのままベッドへと倒れこむ。
何も考えられない。どうすればいいのか、わからない。
乱れた髪を掻き揚げ、ベッド脇のナイトテーブルに置かれたブランデーに手を伸ばす。オレは以前マリナを失った後のように、アルコールに頼らなければ眠ることの出来ない日々が続いていた。
昨夜から置かれたままになっていたグラスに琥珀色の液体を注ぎ込み、味もわからないほど一気に喉へと流し込む。いくら飲んでも酔うことは出来なかった。

ブランデーのボトルが空になる頃、ノックの音と共に、ジルがやってきた。どうやらこんなときでも仕事は待っていてくれないらしい。
助けを申し出るジルのほっそりとした腕を拒み、オレは重い体をベッドから引き剥がして執務室へと向かった。髪も、服装も、乱れたままで。
こんなオレを見ても、ジルは何も言わない。何故オレがこんな風になっているのか、その理由を理解しているからなのだろう。
執務室までの歩きなれた道のりが、ひどく遠い。この部屋のドアはこんなにも重かっただろうか。
向かいなれた執務机の前の椅子に、オレは音がするほどどっかりと体重を預けた。
深く椅子に腰掛けたまま、すでに渦高く積まれている書類の束に目を落とす。何の感情も抱くことなく、それらを一つ一つ機械的にさばいていく。こんなことに何の意味があるというのか。
オレは傍らに置かれたブランデーグラスに手を伸ばした。ジルがとがめるような視線を向ける。だが、オレはそれに気付かない素振りで、アルディや世界にとっては重要な、オレにとっては至極くだらない仕事を片付け続けた。
体内に入れるアルコールの量は、時間と比例して増えていく。
酔いたくて酒を飲んでいると言うのに、オレの頭の中は飲むほどに冴えていくような気がした。
やがて、アルコールを注がれ続けたグラスが紅茶のカップに変わった。ジルの仕業だ。
時間か・・・。オレはそう思い、紅茶を口にする。
暖かく香り高い紅茶はオレの心の乾いた部分にゆっくりと染み込んでゆき、マリナの笑顔へと変わっていった。

マリナの記憶が消えてしまった。オレはそのことに絶望しているわけではなかった。
記憶とは過去の情報に過ぎず、記憶障害の治療自体はさして難しいものではないのだから。
だが。
マリナの、オレへの愛が消えてしまった。跡形も無く。オレたちのあの愛の日々が、まるで無かったかのようなマリナの瞳が、オレに絶望を与えていた。
オレではない、他の男を愛しているマリナ。そんなマリナを見ることに耐えられなかった。もしこのままマリナの症状が改善しなければ、永遠にマリナはカズヤを愛し、求め続けるだろう。
その事実がオレを苦しめていた。
朝、目覚めるたびに、マリナはカズヤに恋をする。何度も、何度も。
その事実が、苦しい。



                                                       続く



※ ちょこっとあとがき ※
キリリク作品第2話をお届けしました。ふうっ・・。
シャルル、苦しんでおります。
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~ Comment ~

あああ!(T△T) 

てぃあさん、こんばんは♪
ミョーな時間に起きてしまい、ミョーなコメントを残さないか心配な135です(^^;)

あああああ、シャルルの痛みで私も痛い!!(T0T)
某所にてしばらくアヤシイ方向に動いていたかに見えた私ですが、過去も昔も(あ、同じだ、やっぱりオカシナことを!)依然として、れっきとしたシャルル愛好家!!!!

ああ、二人の愛が、愛がぁぁぁぁ(落ち着けって)
てぃあさん、めっちゃ新境地じゃないですか! ビンビン来ますよ、ビンビン!
シャルルの痛みが~・・・・っ!!
マリナへの愛が~~~っ!!!(TT)

ああ、ツライ。なんてツライ展開。
シャルル愛が燃え上がってしまう(Mか!?)

てぃあさん、激しく続きが待ち遠しいですっ・・・。
身体に気をつけてと願いつつ、次のお届けを首を長くして待っておりますね~~(^0^)v

つ・つらい・・・ 

目覚めるたびに和矢に恋するマリナを見て苦しむシャルル。。。
あぅ!苦しむシャルルを見て私も辛くなってしまいました(;;)
でもですね、そんなあなたに萌えている私もいるのです~(笑)
ごめんねぇ、シャルル(^^;

これでもれっきとした、シャルル愛好家!でございますヨ☆
あなたの幸せを願って止みません!
シャルル、マリナの愛を取り戻すために頑張れ!!

続き、とても楽しみにしておりますね♪
まずは、お体を暖かくして、ゆっくりと、ご養生くださいませね。

web拍手だけでは足りず・・・ 

心臓が苦しいです・・・(ToT)こんなに苦しいものとは・・・
何度も深く愛し合った(愛し合っ・・・てますよね?・汗)自分との想い出を一切失ったうえに、他の男のことを常に恋する瞳で聞いて来られる状態が毎日続くなんて!(/_;)
傍で読んでる自分でさえこんなに苦しいのですから、シャルルの心情たるや(涙涙)あの、何度もキスをして眠りたいという部分、切ない!切ないです!!シャルルには、ほんとにマリナだけなんだなぁ・・・という、そこでまたまた切ない気持ちになりました。

お風邪を引かれたとのこと、大人で38度は辛いですね・・・栄養とお薬と休養で、早く良くなってくださいませ!!(今年は喉からくる風邪が結構流行っているようです!)

続き、大人しく待っております・・・!

送れていなかった・・・。 

こんにちは!
このお話を読んで、コメントをせずにはいられず、しようとしたものの、書いては消しを繰り返しているうちに、もう今日です。

シャ、シャルルがあ~。
切ないっ、コバルトのときよりも切ない!
どうなるかもわからず、目の前で無邪気にほかの男を愛しているマリナを見なきゃいけないなんて・・・(涙)
痛いっ、私の心も痛いっ!です!!
「マリナ、あなたはおかしいほど丈夫なんだから早く治りなさいよ!」って思ってしまいます・・・。

でも、どこかで切ないシャルルも・・・◎と思っていたり。


ものすごーく気になってしまいますが、まずはお体を大事になさってくださいね。
ゆっくりなさってください。

ありがとうございます! 

>135様
どうもです~♪
タイトルから叫んでいただき、ありがとうございます(笑)
痛かったですか?
今回はシャルルの痛みや苦しみをたくさん書いてしまったので、もしかしてあんまり受け入れられないかも・・・と心配しておりました。
シャルル愛が燃え上がってしまうといてもらえてとっても嬉しかったですv
実は私も切ないシャルルが大好きなのですvv

続き、がんばって書きますね♪

>ガーネット様
どうもです~♪
あら。ガーネットさんも切ないシャルルがお好きですか?
ですよね~vv
イエイエ、私だってれっきとしたシャルル愛好家☆でございます!
けっして彼を不幸にしたいわけではないのです(笑)

続き、がんばりますね♪

>natsu様
どうもです~♪

ああ、natsuさんまで泣かせてしまった・・・。
確かに恋人が自分との思い出を失っただけでも辛いのに、新しい思い出も築いていくことが出来ないなんて辛いですよね・・・。
マリナへの強い想いがあるからこそ辛いのでしょう。

エエ、深く愛し合っていましたとも!(笑)

風邪は大分楽になって来ましtが、夜になると熱が出るんですよねぇ・・・。
今はクスリのせいかとっても眠いです。

続き、がんばって書きますね~♪

>くみゅー様
どうもです~♪
コメントはいつでも365日24時間受付中ですv
ぜひ、思いついたときで結構ですのでコメントしてやってくださいませv

切なかったですか?
どうも今回のお話は皆様を痛くさせている模様・・・・。
初めての経験にちょっとドキドキしております(笑)

>「マリナ、あなたはおかしいほど丈夫なんだから早く治りなさいよ!」
くみゅーさんナイスです!
ぜひマリナにそう伝えてやってくださいませ。

でもやっぱりくみゅーさんも切ないシャルルがお好きなんですね?
実は私もです♪(笑)

第3話もがんばりますね。

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