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ひとみ系創作」
並木道シリーズ

恋物語

2006.10.30  *Edit 

シャルルはマリナの肩を抱いて、カフェへと入った。店内は電球色の明かりで満たされていて、ゆったりとしたピアノ曲が流れている。
2人はなにも言葉を交わさないまま寄り添い、時折視線を絡ませながら、さっきまでシャルルが座っていた席に着いた。そこには中身が半分入ったカップと、数本の吸殻が入れられた灰皿がそのまま残っていた。

「ねえ、シャルル?」

最初に口を開いたのはマリナだった。カフェのギャルソンにミルクのたっぷり入ったカフェオレと何種類かのケーキを注文した後、テーブルに頬杖をついて、シャルルではないどこか遠くを見つめるようにして問いかける。窓の外には午後の陽光が眩しいほどに煌めいて、行き交う恋人たちを照らしていた。

「なんだい?」

マリナの視線の先に何があるのかを知りながら、シャルルはその愛しい瞳を捉えるように見つめた。

「いつか、和矢に会えるかな?」

切なそうなマリナの顔が胸に痛い。本当はその名前を聞くにはまだシャルルには時間が必要だったから。

「・・・・・。」

シャルルは何も言わない。けれどシャルルの瞳が戸惑うように揺れたのをマリナは見逃さなかった。

「どうしたの?」

マリナの瞳が不思議そうに揺れる。カズヤという男はマリナの心に楔のように打ち込まれていて、消して外れることは無いのだろうか。
シャルルはかつて、カズヤになりたいと願った。マリナに愛される男になりたいと。
だが、それは間違いだと知って、命を捨ててもいいと思えるほど苦しんだ過去も今はもう昔のことだった。

「君は、和矢に会いたいのか?」

マリナが愛しているのは自分のはずだと、そう確信している。彼女に触れていいのは自分だけだ。なのに。カズヤという名前をマリナの口から聞くだけで、こんなにも不安なのは何故だろう。
カズヤという男の価値はシャルル自身、わかりすぎるほどにわかっていることだった。
自己に対する客観的な自信と価値は、理解している。だがそれはマリナの愛を得ることには繋がらないことも理解していた。

「会いたいわ。だって今のあたしたちがあるのは和矢のおかげだし、あんただって友達に会いたいでしょう?」

シャルルが何故冷たい表情をしているのか、マリナにはわからなかった。マリナの中では、和矢とのことはとっくの昔に整理のついた感情だった。
確かに和矢は大切な人だ。それは変わらない。けれど、それは恋から友情へと変わったのだ。
シャルルと一緒に、いつか時が来たら和矢に会いたいと、そう思っていた。和矢は大切な初恋の人で、元彼氏で、大切な親友だから。

「そうだね。トモダチには会いたいね。だが恋敵はごめんだ。」

シャルルは自分の不安を悟られないように皮肉めかしてマリナに告げる。こんなにもマリナに溺れているなんて、きっとオレしか知らない、そう思った。
目の前の愛しい女はこれが本心だなんてきっと気付かないのだろう。

「なっ!馬鹿ね。あたしと和矢はもう終わったんだもの。そんなことになるわけ無いじゃない。」

マリナは声を荒げた。自信過剰なフランス人はまだ自分の愛を疑うのだろうか。
マリナは自分が思うよりも遥かにシャルルに溺れているのだ。こんなにも愛してしまうことになるなんて、いったい誰が予測できたというのだろう。

「ああ、そう願いたいね。」

シャルルはテーブルの上に組んだ自身の手に視線を移す。マリナが激昂したことに口元が緩んできたのを見られないようにするためだった。

「何よ、それ?」

マリナは頬を膨らませて怒っている。その仕草があっけなく男の理性を打ち崩してしまう事に彼女は気付いているのだろうか。

「君はいつ心変わりするかわからないからね。惚れっぽいマリナちゃん。」

クスリと笑って、冗談のように告げた言葉はやはり本心だった。冗談の中に本心を、皮肉の中に本音を隠してシャルルは自らを守っているのだ。
マリナの心変わり。それがシャルルの最も恐れることだった。誰もが跪くと言うこのシャルル・ドゥ・アルディの、最大にして最強の弱点だ。

「失礼ね!あたしはそんな惚れっぽくなんかないわよっ」

マリナはさらに顔を真っ赤にして怒った。シャルルはそれをあおるように次々に言葉を連ねた。

「へえ。それは初耳だ。大体君は無防備すぎるというんだ。あの時だって・・・・・etc。」

それはシャルルがずっと心の中に抱え続けた棘のようなものだ。どれだけの時間、マリナが他の男を見ているのを眺め続けたことだろう。あの時はそれが永遠に続くのではないかと思っていた。

「ストーップ。じゃああんたはあたしがず~っと和矢を思い続けていれば満足だったってわけ?」

マリナはシャルルの小言をさえぎるように手を振って言った。
シャルルが和矢との永遠の愛を信じて、手を離してくれたことは知っていた。和矢との恋が終わったときに彼が傷ついたのも知っていた。
でも。それでも。シャルルを愛した。

「・・・・そういう意味じゃない。」

「じゃあどういう意味よ?」

二人の間になんとなく気まずい空気が流れ、お互いに目をそらす時間がだんだんと長くなる。
マリナはシャルルが答えるまで引く気は無かった。自分がシャルルを好きになってしまったことが『惚れっぽい』とか『すぐに心変わりする。』というように言われるのは我慢ならなかったのだ。
長期戦になることを覚悟して、マリナは腕組みするような格好で、テーブルにひじを載せ、運ばれてくるケーキとカフェオレを待った。
やがて注文した品物が届いてもマリナはシャルルに問うような視線を向け続けたままケーキを口にしていた。

「オレには。」

しばらく気まずいような空気が流れた後、シャルルが手元に落としていた視線を上げ、マリナを見つめてきた。

「ん?」

フォークの先にさしたケーキのカケラを口に放り込んでいたマリナは目線だけをシャルルに移す。

「オレには会いたいと思ってくれないの?」

シャルルは誘惑するような光を瞳にたたえて、椅子からわずかに腰を浮かせ、テーブルに乗り出すようにして、マリナのあごを捉えた。
突然の出来事にマリナは口に入れたケーキを飲み込むことも出来ずに驚いてシャルルを見つめる。
シャルルは面食らったままのマリナの唇をさらうように口付けた。
口付けたマリナの唇は酔うほどに甘く、震えが来るほど柔らかい。その唇に、どれだけの男が酔わされたというのだろう。シャルルは自分のうちに渦巻く嫉妬に焦がされそうだった。彼女を愛するということはこんなにも苦しみを伴うものなのだ。

「#$%&‘&%#$%&’&()!!」

わけのわからない言葉を発するマリナに、シャルルはもう一度、さっきよりもゆっくりと口付けた。
そして、ほんの少し唇を離して、誘惑するようにマリナを見つめる。

「答えて?マリナ。」

吐息がかかるくらいの距離で、シャルルはマリナに問いかける。マリナの瞳はうろうろとせわしなく動いていて、回りを気にしているのがわかる。
シャルルはさらに瞳に艶かしさをこめてマリナの耳元で囁く。
『何ならこのままもっと先までいってもいいんだぜ。
君はオレのものだと、ここにいる全員にわからせてやろうか?』
シャルルの熱っぽい吐息が、マリナを追い詰める。マリナはもう何も考えることが出来なかった。

「シャ、シャルルの、ばかーーーーっ!!」

追い詰められたマリナはたまらずに叫んだ。さっきまで寂しそうだったり、イライラしていたりしていたのに、突然のこの妖しさは何だというのだろう。
マリナは真っ赤になってシャルルの指を振り払い、椅子の背に体を預けた。少しでもシャルルの美しい顔から遠ざからなければ、ここがカフェだということを忘れてしまいそうだった。

「君は、本当に意地悪だな。」

シャルルは口元をゆがめて笑う。この愛しい恋人は、無意識のうちにこんなにも男を翻弄する。
恋とはなんと愚かしく、なんと甘美なものか。
相手を理解したいと願い、理解できないからこそ惹かれてしまう。
理解できないからこそ愛しいのに、理解できないから不安になる。
まさにパラドクスだ。
ならば、とシャルルは思う。
ずっとマリナを誘惑し続けよう。いつも自分しか見えないように。

それは、ある昼下がりの恋人たちの物語。
神に愛された男と、その男を愛した女の取りとめの無い恋の1コマ。

~Fin~




※あとがき※
『 Avenue de marronniers 』~マロニエ並木~のその後を考えてみました。
実はこのお話、ある方への差し上げ物として書かせていただいたもので、UPの予定は無かったんですが、その方から素敵なプレゼントを頂いたので、これは皆様にも見ていただこう!と思ってUPの運びとなりました。

頂いた素敵なプレゼントは → こちら

一人一人の視点のあとなので、三人称で書いて見ました♪
いやぁ難しいですねぇ。三人称!
でもシャルルとマリナそれぞれの気持ちを書くことが出来て新鮮でした。
・・・・しかし。なんとなく暗い感じが・・・・(汗)
し、しません?
ハイ。修行不足でございます。
シャルルとマリナのラブラブ路線が書きたかったんです。
そんな空気がちょこっとでも感じていただければ幸いです!

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~ Comment ~

陽だまり 

暖か~~~い☆
今日はなぜかとても寒くて暖かさを求め、てぃあさんの創作を再び拝読しに参りました♪
お陰で心の中がホンワカいたします☆
何度みても思うのですが、台詞自体はシャルルそのものなのにシャルルの幸せが伝わってきます。。。

嬉しいですv 

>ガーネットさん。

今日はホントに寒かったですね!
11月になったら急に足元から底冷えしてきた感じです。

再読してくださったんですね。とっても嬉しいデス。
暖かい気持ちになってくださったのなら、こんなに幸せなことはありません。
お話を書いていて良かったですv
シャルルを幸せにしたくて創作を始めた私。
ぜひご一緒にシャルルを幸せにしましょうね~♪
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