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ひとみ系創作」
並木道シリーズ

Avenue de marronniers 〈deux 〉

2006.09.22  *Edit 

秋。紅葉の季節は誰の上にも訪れる。
色づいたマロニエ並木は、ひらひらとその葉を散らし、やがて来る冬への準備を整える。
木の葉は、人々の郷愁を誘い、恋人たちをより深く寄り添わせる。
黄金色に色づいた季節の中で、人はやがて来る別れを恐れているのだろうか。
迫り来る冬は、人々の心を凍て付かせてしまうというのか。
この美しい黄金色の季節は、短いからこそ美しく、切ない。


その日はマリナと待ち合わせだった。
オレはマロニエが植えられた秋のシャンゼリゼ通りを急いでいた。
別に待ち合わせに遅れそうだったわけでもなく、時間はまだあるのに、なんとなく気がせいて、歩く速度がだんだんと増していく。
こんな自分にオレは驚いていた。以前のオレには考えられない行動だった。
マリナに早く会いたい、その思いだけで待ち合わせ場所へと急ぐ。
まったくオレときたら、どこまでマリナにイカレているのだろう。

待ち合わせのカフェに着き、店内に入ると、案の定マリナはまだ来ていなかった。
それでもかまわない、そう思える自分の感情が不思議だった。
先に来ているオレを見て、『早いのね』と笑うマリナの顔が見たい、もし時間に遅れてくるのなら、息せき切って走ってきて、謝る姿が見たいと思う。
マリナが待ち合わせに指定したカフェは、静かなピアノ曲が流れていて、それほど客も多くなく、ゆったりとしていて悪くなかった。
・・・いつの間にこんな店を見つけたんだ。・・・
沸き起こる軽い嫉妬にオレは自嘲的な笑みを浮かべた。
オレの知らないマリナの時間。知らない顔。そのすべてが恨めしい。
オレ自身四六時中マリナの傍にいられるというわけでもないというのに。

待ち合わせの時間まで後1分。どうやらマリナは遅刻らしい。店の窓の外にはマリナの気配さえうかがうことは出来なかった。
木の葉舞う秋のシャンゼリゼは愛を語り合う恋人達にはうってつけの場所だ。
連れ立って歩く恋人たちのように、マリナと歩くのも悪くないかもしれない。
そんなことを思いながら窓の外へ視線を向けていると、遠くから走ってくるマリナの姿が見えた。
息せき切って走ってくるマリナはまるで子供のようだった。
真っ赤な顔をして、一生懸命に走ってくるマリナについ口元が緩んでくる。
いつでも懸命に生きているマリナ。
その存在自体が、ほとばしるような生命の輝きが、眩しくて愛しい。

懸命に走っていたマリナが、待ち合わせのカフェの入り口付近でふと立ち止まった。
オレのいる席から見えるウインドウの前で、何かに気をとられて立ち尽くしているマリナ。
その視線の先が気になって、マリナと同じように視線を向けてみたけれど、視線の先には木の葉舞う秋のシャンゼリゼがあるだけだった。

ここではないどこかへと向けられた瞳。
マリナは今、何を見ているのだろう。

『今ここにいるオレを見てくれ。』

心の奥底からそんなもう一人のオレの声がする。

マリナの瞳は、今何を映しているのか。

マリナの心は、今この場には無いように見えた。
木の葉舞う秋のシャンゼリゼ通りを、ほんの少し悲しげに見つめている。
しばらくそうしていただろうか。
マロニエの植えられた道の先をじっと見つめていたマリナがすっと顔を上げ、天を仰いだ。
秋の日差しがマリナの顔を照らし、走ってきたために上気した肌は、生命の息吹を色濃く感じさせる。
そんなマリナは、まるで秋のシャンゼリゼに飾られた一枚の絵画になってしまったように見えた。
オレがいままで見たことの無い顔で、天を仰いだまま、優しげな微笑を浮かべるマリナ。

マリナは今、何を思っているのだろうか。
マリナがこのまま木の葉の中に消えてしまうような感覚にとらわれる。

オレは思わず立ち上がり、カフェの入り口を目指した。
カウベルの付けられたドアを開け、そこに立ち尽くしていたマリナの背中を捕まえ、囲うように抱きしめた。
マリナは、ここにいる。それを確かめるように、マリナの茶色い髪に顔を埋めた。
今、マリナはここにいる。オレのそばに。
壊さないようにそっと抱きしめた何よりも愛しい存在は、今、確かにここに存在していた。
なのに、どうしようもなく不安なのは何故だろう。

君が愛しくて、どうにかなってしまいそうなほど、君を愛している。

愛してる、君だけが愛しい。
君がどこへも行かないように、ずっと抱きしめているから、だからいつまでもこの腕の中にいて。

オレとマリナの目の前をマロニエの木の葉が一枚、螺旋を描いて舞い降りていった。
風に揺れる木の葉は、今のマリナの心のようだった。

オレは黄金色の風の中、マリナを抱きしめる腕に力を込めて、その柔らかい唇に口付ける。
口付けたマリナの向こうに、黒髪の親友の切なそうな笑顔が、見えたような気がした・・・。


fin



※あとがき※
カウント269を踏んでくださったいりこ様からのリクエストで生まれた『Avenue de marronniers 』~マロニエ並木~をお届けしました。

いりこ様のリクエストは『イチョウの「並木道」と対になるようなパリ編のお話』というものでした。

『マロニエの木の葉舞う様を、弾むような笑顔で見上げていたのに、ふと一瞬目を伏せたマリナ。そこに何かを感じ取ってしまったシャルルの独白---高く澄み渡った秋の空に馳せる、想いと誓い』
というシチュを頂いたのですが、いかがだったでしょうか?

いりこ様のリクで生まれたこのお話、とっても楽しく書かせていただきました。

素敵なリクエスト、ありがとうございました!
 

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~ Comment ~

 

きゃ~~んっっv-35
早速拝読させて頂きました!!
私の貧困なイメージをはるかに凌ぐ、やっぱりてぃあ様らしいキラキラした素敵なお話、どうもありがとうございましたm(_ _)m

特にラスト!後ろから優しく抱きしめ、マリナの髪に顔を埋めるシャルル、これは「どーして伝わったのっ?!」ってくらい、リクを書いている当初から私の中の脳内画像としてあったのです。(いや、脳内どころか実際、描けもしない落書きまでしていたような…汗)
あまり色々注文を付けすぎては書きづらいかと思い、削った部分だったのですが。。感激(TT)

はあぁ★★感動のあまり取り乱しております。
また改めて参ります。取り急ぎ御礼まで<(_ _)>

 

>いりこ様。
どうもです~♪
早速読んでくださってありがとうございます。

ラストのシャルル、気に入っていただけてよかったですv
カフェを背にしたあの姿が頭の中に映像として浮かんだんですよ。
もしかしていりこ様からのテレパシーだったりして(笑)

『感動』だなんて嬉しいお言葉をありがとうございます~~!
こちらこそ、楽しく書かせていただきましたv
ありがとうございました。

 

なんて、秋色の雰囲気溢れるステキなお話・・・♪
おはようございます、今日は早起き135ですv

同じシーンのマリナとシャルルのダブル視点・・・。
とっても贅沢な感じがして、楽しかったです!

途中マリナが和矢を思い出すシーンでは、「ひとみWolrd夢辞典①」の、「和矢! 大スキッ」のイラストを思い出してしまいました。
幸せそうな黄色の空気の中、嬉しそうに和矢に飛びつくマリナ・・・。
私の和マリイメージは、あの1枚の影響大です。

そう、和矢とマリナは愛し合っていた・・・。
それでも今一緒にいるシャルルとマリナを思って、今回のお話を読みました。

秋は思いの深まる季節・・・。
ほんといつも思うのですが、てぃあさんのお話は「空気感」がありますね~~。
そっと抱き合うシャルマリに、そんな空気を味あわせていただきました♪

 

>135さん。
どうもです~♪
早起きですね!

お読みいただきありがとうございます。
あんまりにも反応が薄かったので、『つまらなかったのでは?』とへこんでおりました・・・。
いつもドキドキしながらUPしておりますe-263

和矢とマリナは両思いだったのですもの!
恋愛っていろいろあるけど、楽しいときも幸せなときもあったはずなので、シャルマリを推奨している私ではありますが、和矢との恋愛も否定したくないのです~(泣)

こんなへなちょこな私ですが、日々精進して、今の私に出来る精一杯のお話をお届けできたらいいな、と思っております。

コメントいっつもありがとうございます!!
たくさんパワーを頂いてますよ~

 

てぃあさん再びこんにちは~♪

つまらないなんてとんでもない!
秋色の雰囲気に満ち溢れて、素敵なお話でしたよ~vv
こういう空気感のあるお話、とっても好きなのです♪
これがなかなか難しい・・・。


確かに創作をUPするときって、ドキドキしますよね。
始めの頃ほどじゃなくなりましたが、私もいまだに・・・。
最近あまり読み返さずにUPしてしまうので、誤字はないか、話はつながってるか、コピペして編集した部分は間違っていないか・・・。
え? そういう意味じゃない??(爆)

こちらこそ、いつもありがとうございます!
私も修行の身ですが、お互い楽しくやってまいりましょうね~(^^)v

 

こんにちは♪

・・・感動です!!
マリナが、マロニエの並木道で足を止めて彼のことを思い出すシーン、じーんとして涙ぐんでしまいまいた~。
私までせつなーくなってしまった・・・
シャルル視点にも胸がきゅうっと鳴ってしまいました。
今の時期にピッタリとくる素敵なお話を読めて私とっても幸せです~♪
てぃあさんのお話は、とてもしっくりくる、というか私を心地よい世界に連れて行ってくれます。


深いところでつながっている共通の人がいるって、素晴らしいことだと思います。
いつか、きっとやさしい気持ちと笑顔で3人で会える日がきますように。

 

>135さん。
再びどうもです~♪

誤字脱字、話のつながり、気になりますよねぇ~。
素人とはいえ、人様に読んでいただいているわけですからとってもドキドキします。
私の場合、UP前に一度読み返し、UP後にも確認しますが、それでも誤字ってあるのですよね(汗)
自分の書いたものって、内容を知っているから読み流してしまうのかもしれません。

ご一緒に日々精進してまいりましょう!

>ことりさん。
どうもです~♪
感想ありがとうございます。
切なくなっていただけましたか?
今回のテーマは『秋色』なのです。
いろんな色のあふれる並木道がお届けできましたでしょうか。

あの3人は、いろんなことを共有してきた、心の深い所で繋がっている3人であってほしいと思います。
3人が笑い会える日が早く来るといいですよねぇ・・・。

ではではお二人ともありがとうございました!

 

>いりこ様
温かいお言葉、ありがとうございます・・・(ホロリ)。
とってもうれしかったです。

大丈夫です。もうばっちり膨らんでおります!

最近ちょっと忙しかったこともあって、気持ちが下降気味だったのですが、大分落ち着いてきたので、またがんばってお話を書きたいと思っています。
そのうちに連載とかもしちゃうかもしれません(ボソッ)

ではではv

 

てぃあさま、こんばんは~!

うわ~~~。なんて素敵なお話でしょう。
皆様おっしゃていますが、てぃあさまのお話は本当に空気感がいいです~~!!
三人の過去と現在を感じて、きゅんとした気持ちになりながらも、読み終わりにはとっても幸せを感じました。
かさかさとした音を足元に感じながら黄金色に紅葉した並木道を歩きたいですね~。

和矢への愛(感謝?)は永遠かもしれないけど、シャルルの気持ちをちゃんとわかって答えているマリナが前より大人に感じました。

ただね、マリナちゃん!!
シャルルとの待ち合わせで遅刻はしないようにっ!!シャルルが許しても、私は許せない~!

 

>joyさま
どうもです~♪
お体の方は大丈夫ですか?

感想ありがとうございます。
幸せを感じていただけたなんてとってもうれしいです。
そろそろ紅葉が綺麗な季節ですよねぇ。
秋の並木道をそぞろ歩きたいです。

マリナへのお小言、しかと届けておきますね(笑)
シャルルとの待ち合わせならきっととっても早くから待ち合わせ場所に行ってしまいそうな私です。

ではでは、お越しいただき、ありがとうございましたv
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