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ひとみ系創作」
桜の記憶

※ 桜ひとひら ※

2007.06.23  *Edit 

※ 桜ひとひら ※


桜。
今年も桜の咲く季節がやってくる。
空が桜色に染まる頃、時は、さかのぼる。
あいつにはじめて会ったのは、こんな春のことだった・・・・。




「それでは、転校生を紹介します。池田さん、入って。」

担任の女教師の声が新学期のなんだかそわそわと浮き足立った教室の中に響く。
転校生なんてこの学校に入学してから2年。初めての経験だった。
開けっ放しになっていた教室の戸のところから、一人の女子が入ってきて、担任の女教師の隣に立った。
第一印象は、顔のでっかい女子。
小学2年生としても背は小さくて、肩までの髪はぼさぼさ。一応スカートをはいてはいるものの、正直言って、女の子っぽくない感じだった。
クラスメートたちのざわめきと、興奮した空気。そんないつもと違う教室の雰囲気に戸惑っていたのを覚えている。



「じゃあ池田さんに自己紹介をしてもらおうかな。」

担任の女教師がそう言って促す。あいつは特に緊張した様子も見せず、慣れた様子で大きな声を張りあげた。

「池田マリナですっ!よろしくねっ!!」

結局たいした自己紹介もせず、あいつはオレの斜め後ろの席に着いた。
隣の奴に親しげに話しかけ、楽しそうに笑う声が聞こえた。
まるでずっと昔からここにいたかのようにすっと教室に溶け込んだあいつ。
その明るさと人懐こさがなんだか少し羨ましく思えた。

「・・・・すっげぇ、チビ。」

オレは席に着いたまま、ボソリと言った。なんだかちょっと面白くなかった。
担任の女教師の目線がオレに向けられる。たぶん注意しようとしたんだろう。女教師が口を開いたのが見えた。
けれど、女教師の声がオレに届くことはなく、斜め後ろにいたはずのあいつがオレの目の前に立ちふさがって、キッとオレをにらみつけていた。

「ちょっとあんた!転校生には優しくしなさいって先生に教わらなかったの!?
だいたいね!チビのどこが悪いってのよ!」

オレに文句を言ってくる、その目のまっすぐさに驚いた。
うちのクラスの女子の誰にも、いや男子にだって、こんなにまっすぐな目をした奴はいなかった。

その時から。あいつはいつもどこかで気にかかる、そんな奴になったんだ。





「姫宮美女丸!おまえ、生意気だぞっ!」

まただ。オレは別に意識して生意気にしてるわけじゃない。だけど、オレが母さんと二人で暮らしていることとか、この『姫宮』って言う苗字のこととか、『美女丸』って言う名前のこととかでいちゃもんをつけてくる奴が結構いる。それは同級生だったり、上級生だったり、色々だ。

「おい!無視してんじゃねーよっ!」

オレは売られた喧嘩は買うほうだ。けれど毎度毎度そんなくだらない言いがかりをつけてくる奴らにに付き合っていられるか!ばかばかしい。オレは相手にせず、そのまま下駄箱へと向かった。
その時だった。

「ちょっとあんたたち何してんのよっ!」

その声に振り返ると仁王立ちになった池田麻理奈がオレにいちゃもんをつけてきていた上級生をにらみつけていた。

「ナンだよ、お前!?」

「一人に大勢なんて卑怯じゃないのっ!やるんなら一対一でやって頂戴!」

『そのほうがおもしろいじゃない!』次に続いたその一言にその場にいた奴らもオレも、がっくりと力が抜けた。
面白けりゃ何でもいいのか?あいつ、何考えてんだ?

「ばっかじゃねぇの。行こうぜ。」

結局良かったのか悪かったのか、奴らは去って行き、面倒なことにはならずにすんだ。
もしかしたらこれは、助けてもらったとか、そういうことなんだろうか。

「あらっ?もう終わり?つまんないからあたし帰る。」

そういい残して、あいつ『池田麻里奈』は帰って行った。
『つまらない』とか『面白い』とか、そういう問題なんだろうか、これは。
オレは半ばあきれながらあいつの背中を見送った。何か釈然としないような、変な気分だった。




「あいつ・・・・、本当に楽しそうに見えたよな。」

眠りにつく少し前、オレは昼間の出来事を思い出していた。
あいつが喧嘩になりそうな所へ割り込んできた時も、つまらないと言って帰ってしまった時も、あいつの言葉の中には少しも皮肉ったり、バカにしたような響きはなかった。
あの、最初の日のまっすぐな目のように自分に正直な、あいつの言葉。
その言葉がそれから長いことオレの中にとどまり続けることになるなんて、その時のオレは思いもしなかった。

そんな些細なやり取りからあまり立たないうちに、オレは母を亡くし、名古屋には他に身寄りもいなかったことから、甲府にいる父親の元に引き取られることになった。
バタバタと葬儀を済ませ、甲府へと旅立つその日。オレは思った。
もっと、あいつのことを知りたかった。あの、まっすぐな目の見つめる先を見たかった。
もっと。あいつと一緒にいろんな事をしたかった。
あいつと一緒に。大人になりたかった。
あの時のオレは一人で生きていける程大人じゃなかった。
何を望んでも、どうにも出来ないただの、子供だった。



それから5年。
あの頃より少し大きくなったオレはあの町を訪ねた。
2年生の頃暮らしていた町は、中学生になったオレには少し小さく見えた。
楽しいことばかりじゃなかったこの町に、もう一度来たいと思ったのは、あいつのことがあったから。
けれど。その街にいるはずの、中学生になったあいつの姿はどこにもなかった。
強烈な印象だけを残して、去っていってしまったあいつ。

なぁ、今でもチビなのか?
今でも、あのまっすぐな目をしているのか?

オレ、ホントは知ってたんだぜ。
母さんが死んだあの日。お前が尋ねてきてくれたこと。
たくさんの大人たちが出たり入ったりする玄関の手前で、ぽつんとチビのお前が立ち尽くしてた。
あのときのオレは自分のことだけで精一杯で、お前に何の声もかけることも出来なかった。
でも、お前が来てくれたこと、本当はすごく嬉しかった。
こんな風に会えなくなってしまうのなら、あのときに伝えておけば良かったと思う。
名古屋を離れて、甲府での慣れない暮らしの中で、ふとしたときにお前の事を思い出したよ。
あの、まっすぐな目と、あの、まっすぐな言葉を。

もしかしてあれは・・・。
        
         『初恋』
           
             だったんだろうか・・・・・。


Fin









※ちょこっとあとがき※

小学生の美女丸・・・。言葉遣いが難しかったです。
美女丸になってますでしょうか・・・?
ではまた明日~♪
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